Undevelopped Negatives

未現像の雑感を慎ましく綴ります。

 
 
 

まっちゃんファイナンス

まっちゃんファイナンス

大変興味深い報道がありました。ダウンタウンの松本人志さんが後輩芸人に対して生活費補助のための貸し付けを行うというニュースです。真偽のほどは定かではないですが、申し込む後輩芸人の人数次第では、数億円単位の貸し付けになる可能性もあると報道されています。

個人による貸し付けと貸金業法

少し気になるのが、このまっちゃんファイナンスが貸金業に該当してしまうと無登録貸付となってしまい貸金業法違反になるのではないかという点です。

第二条 この法律において「貸金業」とは、金銭の貸付け…(中略)…で業として行うものをいう。(後略)

第三条 貸金業を営もうとする者は…(中略)…登録を受けなければならない

業として行うとは?

まっちゃんファイナンスが金銭の貸付けにより行われることを前提としますと、あとはこの取組みが「業として行うものか否か」で登録の要否が判断されることになります。

一般的に、「業として行う」金銭の貸付けとは、「反復継続し、社会通念上事業の遂行とみることができる程度のものである貸付け」であると解されています(参考:金融庁の見解)。まっちゃんファイナンスはこれらの観点から業として行ったと言えるのでしょうか?

反復継続性とは?

反復継続性については、実際に複数回の貸し付けを実施していなくとも(例えば1回限りの貸付であっても)反復継続して行う意思があれば、貸金業に該当すると裁判所が判断した事例(昭和29年11月24日付最高裁判決、昭和30年7月22日付最高裁判決等)がありますので、まっちゃんファイナンスも反復継続性があると判断される可能性があります。

事業の遂行とは?

社会通念上事業の遂行であると認められる程度の金銭の貸付とはどのようなものでしょうか。著名な文献では「反復継続的行為が社会通念上事業の遂行とみられる程度のものであるかどうかは、その行為の主体、行為の目的等に即して具体的に判断される必要がある」(大蔵財務協会編「新訂〈実例問答式〉貸金業法のすべて」より)と言及されているものの、その具体的な判断基準は明らかではありません。ただ、まっちゃんファイナンス(という名称はメディアがつけたものですが)の目的がいわゆるコロナ禍のために生活に困窮する後輩芸人の生活支援事業であるという側面は、その高い志のゆえに、残念ながら一定の事業性を想起させるものとなっています。

なお、事業性という判断においては、営利性は要件となっておらず、無利子・無担保であったとしても事業性がないという判断はできないとされています。

解決策など

まっちゃんファイアンスの実現にあたってまっちゃんが貸金業登録を行わずに済む方法はあるでしょうか。一つは、「無利子・無担保の貸付け」といいながら実際は返済を要しない「贈与」として実施することです。一人当たり100万円が上限ということですので贈与税の非課税額(基礎控除額である110万円)の範囲内で収まるケースが多いでしょう。また、実際の貸付を貸金業ライセンスを保有する事業者からの貸付とし、まっちゃんがこの事業者に対して資金拠出する方法もあります。

ただ、個人的に注目したいのは先に紹介したニュースで引用されている、まっちゃんが送ったというメールの文面です。

「コロナで収入が減った芸人に松本人志が金貸します。条件。おもろいやつ」

おもろいやつ、おらんかったから貸しません。貸したかったのになぁ~。代わりにみんなにギャラが支払われる仕事、一緒にやろか!

そんなオチがあっても良いのではないでしょうか。

Work, othersGo Fujii