Undevelopped Negatives

未現像の雑感を慎ましく綴ります。

 
 
 

違和感の違和感

違和感ないという言葉

業務上のやり取りで「違和感あれば教えてください」「違和感ありません」言葉遣いをよく目にします。とりわけ、法務領域という判断や責任を伴う分野ではよく見られる表現です。しかし私は法務人材としてキャリアをスタートした日からこの表現を使わないように努めてきました。

違和感ないという言葉が暗に示すもの

総論として、グレー部分・ニュートラル部分については問いかけ側も回答側もあえて触れないという意図が良いとれます。具体的には以下の通りになります。

問いかける側が使う場合:違和感がある場合にコメントを求めるという趣旨なので、明確な誤りや大きな認識相違がある場合を除いて反発を招きづらいという効果があります。

回答する側が使う場合:違和感はなかった、すなわち、ネガティブチェックを行ったが精査すれば気づいていない問題点もあるかもしれないという含みがあり、回答の責任を軽減する効果があります。仮に回答内容が誤っていて後日指摘があった場合でも「そういう観点では見ていなかった」「ぱっとみたところ違和感はなかったのですが」というエクスキューズの余地を残しています。

業務上この表現が許される場合

例えば経理担当者から法務担当が決算資料の確認を依頼する場合、それに対して回答する場合などは、まさにこの「違和感あるか」「違和感ない」という表現が適した場面と思います。また、経営者が報告資料などに目を通す際に違和感ないとコメントすることも自然です(経営判断が職責であり、個々の情報の正確性・網羅性などの責任は所管部署に委ねるべきだからです)。

これに対して、自らの所管業務・専門領域においてこのような問いかけを行うことは問題があります。「依頼内容をふまえて最適と考える内容で作成したが何かコメントがあればもらいたい」と問いかけ、「適切な内容と考えます」「最善の内容と考えますのでコメントはございません」と回答すべきと思うのです。

しばしば法務チーム内であってもこのようなやり取りが発生し、気づいた範囲でそのような表現を避けてほしいとお願いすることがあります。当人たちはさしたる意図を持っているわけではないのですが、この責任回避・衝突回避を優先するコミュニケーションは知らず知らずのうちに調査や回答の質を下げてしまいがちです。

これからも見かけた際には「責任領域でその表現は避けましょう」と啓発していこうと思います。

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