Undevelopped Negatives

未現像の雑感を慎ましく綴ります。

 
 
 

断つべし先入観

先入観の怖さ

私共のような業種において、思い込みというのは大敵であります。ある結論を導く際に空いたピースを推測や思い込みで埋めてしまって、そのピースが実は存在しなかったと後日判明すること、それは想像するだけでも身震いするような危険な状況です。

昼下がりの幕間、

本日、お昼休みの時間帯にとある場所でデスクワークをしておりましたら、斜向かいにあるデスクで作業をしておりました女性が、電話応対をされていました。口調から明らかに幼稚園~小学校低学年くらいの年次のお子様(おそらくは女の子)と会話なさっている様子でした。きっと留守番中にお母さんがいなくて寂しくて(ちょうど政府の勧告に従って休校とされた学校が多いとの報道がありましたところでしたので)電話してきたのだろう、そう思わせるものでした。

徐々に雲行きが、、

数分が経過した頃から、徐々に女性の口調が厳しくなってきました。きっと仕事中のお母さんが会話を中断しようとしたためにお嬢様がぐずったのでしょう。「一緒にお着替えするから~」とか、「帰ったら一緒に宿題を~」とか、「今度の休みに~」とか様々な交渉が始まりました。

何としても目の前の作業を終わらせたかったのか、お母様は更に矢継ぎ早に条件を提示します。そしてお嬢様は少し大人ぶった子のようです。「お小遣いを~」とか、「お化粧してあげるから~」とか、「私のお洋服を貸してあげるから~」とか、「今夜は一緒にお風呂に~」とか、「おもちゃを一緒に買いに~」とか。徐々に要求がエスカレートしてきている様子がうかがえました。かなりの交渉上手な末恐ろしいお嬢様であるようです。

交渉の行方は、、、

お母様の交渉相手は只者ではありません。なかなか電話を切らせてくれないようです。更にお母様は語気を強めるのですが、焼け石に水のようでありました。お互い昂ぶってきたのでしょう、お母様も一層語気が強くなります。そして、お母様の粘り腰がついに勝利する瞬間が参りました。この手強い海千山千の交渉相手もついに匙を投げることとなり、

「もういい!!」

電話から漏れ出て聞こえるくらい大きな声が部屋に響き渡りました。

周囲の方々は少し驚いたようでしたが、よくある微笑ましい家族の会話ですので、それを迷惑がる様子はありません。しかし、その女性の一番近くで作業していた私には微かな違和感がありました。その違和感の原因を自覚するのに少しばかり逡巡してしまったのですが、すぐにその違和感の正体に気づきました。

その電話から漏れ出た声が、「中年男性のそれ」だったのです。

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